がん医療の最新トレンド(2)
実用化が待たれる光免疫療法

■抗体を運び屋に、がん細胞だけをロックオン
光を照射し、がん細胞を破壊する──。従来のがんの治療法とは全く異なる、新たな発想に基づき開発された「光免疫療法」が注目されています。この治療法は、米国立衛生研究所(NIH)傘下の米国立がん研究所(NCI)の主任研究員・小林久隆氏によって開発されました。

光免疫療法は、「がん細胞だけに結合する抗体」と「光を当てたときにだけ化学反応を起こす物質(光感受性物質)」とを組み合わせた複合体を点滴投与し、近赤外線*を病巣に向けて照射するというものです。近赤外線は赤外線の一種で、テレビのリモコンやスマートフォンの赤外線通信に使われており、人体に害はありません。

* 光は波長の長さから「紫外線」「可視光線」「赤外線」に大別されます。「赤外線」も波長の長さから「近赤外線」「中赤外線」「遠赤外線」に分けられています。

現在進行中の臨床試験では、複数のがんで細胞の表面に現れることの多いたんぱく質EGFR(上皮成長因子受容体)に結合する抗体セツキシマブと、光感受性物質IR700を組み合わせた複合体が用いられています。

抗体は、体内の異物(抗原)に結合し、それを攻撃・排除する働きをもっています。ただし、光免疫療法における抗体は、直接攻撃を担うのではなく、IR700という“武器”を確実にがん細胞に装着する運搬役として働きます。IR700は強力な攻撃力を秘めていますが、光を当てなければ無害です。

点滴投与された複合体は、抗体の働きによってがん細胞に結合します。そして、近赤外線を照射することでIR700は一気に発熱し、がんの細胞膜に孔(あな)をあけます。その孔から、どんどん水分が流れ込むため、がん細胞は膨張し、最終的に破裂して死んでしまいます(図1、図2)。

図1 光免疫療法の流れ

光免疫療法の流れ

図2 光免疫療法が、がん細胞を破壊する仕組み

光免疫療法が、がん細胞を破壊する仕組み

■免疫の活性化が得られ、再発・転移予防の可能性も
光免疫療法の大きな特徴は、がん細胞だけにダメージを与えることができることです。また、この治療法では、免疫も活性化されます。近赤外線の照射後、がん細胞は短時間のうちに破裂しますが、破裂の瞬間にがん細胞の中身(さまざまなたんぱく質)が周囲に放出されます。この中身は、がん細胞の情報そのものといえます。これを免疫細胞の伝達役である樹状細胞が収集し、攻撃役のT細胞に伝えます。情報を得ることでT細胞は活性化し、他の部位にあるがん細胞を攻撃することができるようになるわけです。

また、樹状細胞からの情報を受けて活性化するT細胞の中には、異物を記憶する役割をもつメモリーT細胞も含まれており、再発や転移を予防できる可能性もあると考えられています。

■さまざまながん種への応用に期待
2018年12月から、光免疫療法の国際共同臨床試験(第III相)が始まっています。対象となるのは、すでに2種類以上の治療を受けたことがあるにもかかわらず、治療の効果がみられなかった局所再発頭頸部扁平上皮がん**の患者で、日本人患者も含まれます。同様の患者を対象に、米国で行われた第II相前期の臨床試験では、30人の患者のうち、4人はがんが完全に消失し、9人は縮小したとの結果が発表されています1)

** 頭頸部がんには、咽頭がん、口腔がん、喉頭がん、鼻・副鼻腔がん、唾液腺がん、甲状腺がんなどがあります。頭頸部がんのほとんどは、扁平上皮という組織ががん化したものです。

日本では、頭頸部がん患者3人を対象とした光免疫療法の臨床試験(第I相)が行われ、すでに標準治療を終えていたにもかかわらず、3人中2人に部分奏効が認められました。また国内では、食道がんに対する臨床試験(第I相)も2019年2月から実施されています。

光免疫療法は、2019年4月に厚生労働省の「先駆け審査指定制度」(新薬や新しい治療法を短期間で審査し、いち早く臨床で使えるようにする制度)の対象に指定され、早期の実用化が待たれています。今後、光を体内に届ける技術が進展すれば、多くのがん種に有効となる可能性を秘めています。

【第I相臨床試験】
新しい薬を初めて患者に投与する試験。少数の患者で投与量を段階的に増やしていき、薬の安全性と投与量を調べることを目的としています。

【第II相臨床試験】
第I相臨床試験より参加してもらう患者を多くし、第I相において有効かつ安全と判断された投与量や投与方法を用いて、薬の有効性と安全性を確認します。

【第III相臨床試験】
より多くの患者に参加してもらい、有効性や安全性について新しい薬・治療法と従来の薬・治療法を比較します。

1)楽天メディカル, プレスリリース
https://rakuten-med.jp/20190603

《参考資料》
小林久隆, 薬剤学. 2016; 76(3): 172-176

監修医師紹介

阿部 吉伸 医師

湘南メディカルクリニック新宿院

院長阿部 吉伸医師

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【備考】
日本外科学会永久認定医
日本胸部外科学会永久認定医
心臓血管外科専門医(2004~2009)
下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術実施医
日本癌治療学会会員
日本心臓血管外科学会国際会員
日本胸部外科学会正会員
日本脈管学会会員
日本静脈学会会員
日本血管外科学会会員
日本再生医療学会会員
医学博士

経歴
1990年 国立富山医科薬科大学医学部卒
富山医科薬科大学病院第一外科入局(胸部・心臓血管外科・一般消化器外科)
1994年 国立富山医科薬科大学大学院卒・医学博士
胸部外科認定医取得(食道・肺・心臓外科)
1992年
~1994年
パリ第12大学アンリーモンドール病院心臓外科留学
1997年 国立金沢病院心臓血管外科勤務
2004年 パキスタン、トルコ、ミャンマーの日本大使館に外務省参事官兼医務官として8年間海外勤務。
2012年 新宿血管外科クリニック 院長
2015年 湘南メディカルクリニック新宿院 院長
株式会社シーオーメディカル顧問医就任

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