免疫チェックポイント阻害薬の効果(4)
希少なメルケル細胞がんで承認されたアベルマブ

■患者数の少ない希少がんに治療薬が登場
従来、患者数の多いがんの治療法の開発が優先されてきたため、希少がんの治療法の選択肢は限られていましたが、近年は新しい治療薬も登場してきました。メルケル細胞がんという皮膚がんの治療薬として、わが国で2017年9月に承認(同年11月発売)されたアベルマブもその一つです。

アベルマブは免疫チェックポイント阻害薬の一種で、抗PD-L1抗体薬と呼ばれる点滴静注薬です。免疫の働きにブレーキをかけようとするがん細胞の働きをブロックし、免疫細胞であるT細胞を活性化させることでがん細胞と闘います。抗PD-L1抗体薬としては、日本で初めての承認でした。

■メルケル細胞がんとは?
メルケル細胞は、表皮と真皮の境目に位置し(図1)、触覚センサーとして皮膚に触れた情報(皮膚が押される感覚など)を神経に送り脳に伝達する役割を担っていると考えられています1)。このメルケル細胞ががん化したのが、メルケル細胞がんです。痛みはありませんが、赤色や紫色の硬いしこりが隆起し、急激に大きくなったりします。進行が早く、再発転移もしやすい悪性度の高いがんです。

図1 メルケル細胞

メルケル細胞

メルケル細胞がんの発症メカニズムは十分に解明されていませんが、高齢者に多く、紫外線が当たる顔面、腕、脚に好発することや、黒人よりも白人で多いこと、紫外線の強い地域で発生率が高いことなどから、紫外線の影響が考えられています2,3,4)。また最近は、ウイルス(メルケル細胞ポリオーマウイルス)による発がんの可能性も指摘されています5)

治療は、初期であれば手術療法(切除)と放射線療法が行われます。転移例など手術が困難な場合に使用できる治療薬はこれまでになかったのですが、アベルマブはそうしたときに使える唯一の治療薬となりました。

進行期のメルケル細胞がん患者を対象にした臨床試験では、腫瘍の縮小効果が認められており6)、『がん免疫療法ガイドライン第2版』では、根治切除不能なメルケル細胞がんに対して、アベルマブの投与が推奨されています。

■希少がん治療薬の現状
日本におけるメルケル細胞がんの患者数は、100人に満たないとされています7)。しかし、どんながん種であれ、患者は病気と向き合わなければならず切実な問題です。また、希少がんに分類されるがんは骨肉腫、軟部肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、神経内分泌腫瘍、小腸がん、腹膜がん、原発不明がん、脳腫瘍、眼腫瘍、胸腺腫瘍、中皮腫、小児がん全般などがあり、思いのほか多いのです。個々の希少がんの患者数は少なくても、その患者数を合計すると、がん全体の2割程度を占めるとされます。がん患者の5人に1人は希少がんなのです。

このように、希少がんはがんに占める割合としては少なくないにもかかわらず、標準的治療の確立や新薬の開発は十分に進んでいるとはいえないのが現状です。患者数が少ないために臨床研究や治験ができず、ガイドラインが存在しないものもあります。また、新薬を期待しても、市場規模が小さいために製薬企業は開発しづらいという側面もありました。

そうした中、アベルマブが希少がんのメルケル細胞がんで承認されたことは、患者にとって大きな希望の光となりました。その他の希少がんに対しても、新薬の開発や承認が進み、治療成績が向上する突破口になることが期待されています。

1)Maricich SM, et al.: Science 2009; 324(5934):1580-1582.
2)Agelli M, Clegg LX: J Am Acad Dermatol 2003; 49(5): 832-841.
3)Albores-Saavedra J, et al.: J Cutan Pathol 2010; 37(1): 20-27.
4)Miller RW, Rabkin CS: Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 1999; 8(2): 153-158.
5)Feng H, et al.: Science 2008; 319(5866): 1096-1100.
6)Kaufman HL, et al. Lancet Oncol. 2016; 17(10): 1374-1385.
7)日本皮膚悪性腫瘍学会予後統計調査委員会: Skin Cancer 2004; 19(2): 147-155.

《参考資料》
日本臨床腫瘍学会(編), がん免疫療法ガイドライン 第2版. 金原出版 2019
希少がん医療・支援のあり方に関する検討会, 希少がん医療・支援のあり方に関する検討会報告書 2019
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000095429.pdf
国立がん研究センター, 希少がんセンター(さまざまな希少がんの解説)
https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/index.html

監修医師紹介

阿部 吉伸 医師

湘南メディカルクリニック新宿院

院長阿部 吉伸医師

詳しくはこちら

【備考】
日本外科学会永久認定医
日本胸部外科学会永久認定医
心臓血管外科専門医(2004~2009)
下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術実施医
日本癌治療学会会員
日本心臓血管外科学会国際会員
日本胸部外科学会正会員
日本脈管学会会員
日本静脈学会会員
日本血管外科学会会員
日本再生医療学会会員
医学博士

経歴
1990年 国立富山医科薬科大学医学部卒
富山医科薬科大学病院第一外科入局(胸部・心臓血管外科・一般消化器外科)
1994年 国立富山医科薬科大学大学院卒・医学博士
胸部外科認定医取得(食道・肺・心臓外科)
1992年
~1994年
パリ第12大学アンリーモンドール病院心臓外科留学
1997年 国立金沢病院心臓血管外科勤務
2004年 パキスタン、トルコ、ミャンマーの日本大使館に外務省参事官兼医務官として8年間海外勤務。
2012年 新宿血管外科クリニック 院長
2015年 湘南メディカルクリニック新宿院 院長
株式会社シーオーメディカル顧問医就任

当院で受けることが出来る免疫チェックポイント阻害剤

  • ニボルマブ(抗PD-1抗体)

    ニボルマブ(抗PD-1抗体)とは?

    がん免疫療法(NK・T細胞投与)と併用し免疫機能を高めるニボルマブ(抗PD-1抗体)の点滴治療

    詳細はこちら

  • イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)

    イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)とは?

    CTLによるがん(細胞)の破壊する働きを助ける免疫チェックポイント阻害剤

    詳細はこちら

  • 2種類の免疫チェックポイント阻害剤の併用療法

    免疫チェックポイント阻害剤併用療法とは?

    ニボルマブ(抗PD-1抗体)+イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)併用がん免疫療法(NK・T細胞投与)でがんの治癒率が飛躍的に伸びる可能性があります。

    詳細はこちら

  • アクセル+ブレーキ療法®コラム

    免疫療法のアクセル+ブレーキ療法®とは?

    従来の各種免疫細胞の活性化(アクセル)と、がん細胞の反撃を抑える免疫チェックポイント阻害剤(ブレーキ)を併用した新しい治療

    詳細はこちら

湘南メディカルクリニックによる
あきらめないがん治療

まずは、お気軽にご相談下さい。

新宿
0120-798-300
両国
0120-279-219

通話無料 診療時間 AM10:00~PM7:00

よくあるご質問

  • 治療期間はどのくらいですか?
  • 副作用はありますか?
  • 費用はいくらかかりますか?

カテゴリー別【がん治療情報コラム一覧】

がん免疫療法(治療)の 湘南メディカルクリニック