免疫療法とは?(1)
がん治療 第4の柱、免疫療法のあゆみ

■名実ともに第4の柱となった「がん免疫療法」
時々いい仕事はするのに、安定した成績が出せない控えの選手……。がん治療における免疫療法は、長年そのような位置づけでした。しかし、免疫チェックポイント阻害薬の開発において、大規模な臨床試験が行われ、標準治療に劣らぬ治療成績が実証されたことで、がんの免疫療法は、手術、放射線治療、抗がん剤治療というがん治療の3つの柱に続き、第4の柱として、がん治療の選択肢に仲間入りしたといえます。

アメリカの著名な科学雑誌『Science』は、毎年、その年の最も画期的な科学研究を「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」として選んでいますが、2013年には、がん免疫療法(Cancer immunotherapy)が、その座を勝ち取りました(1。

■皮膚の感染症にかかった患者のがんが消えた?
いまでこそ、分子レベルでの解析が進み、緻密な体系としての免疫の仕組みが理解されたり、さまざまな仮説が実証されたりしてきていますが、最初のがん免疫療法は、アメリカの医師ウィリアム・コーリー氏が、自身の経験に基づいて始めたものとされています。

リンパ肉腫の患者が、丹毒(たんどく=皮膚の細菌感染症)にかかったところ、その肉腫が退縮したことを認めたコーリー氏は、1891年、菌毒素「コーリートキシン」を開発し、がん患者に投与する治療法を試みました。これは、細菌の毒素に対する免疫反応を利用し、高まった免疫力によってがんを小さくしようとしたものです。

コーリートキシンは、約1,000人の患者に投与されたとされ、コーリー医師の死後、彼の娘が、484人について経過を検証しています。その結果、手術ができなかった患者312人中190人でがんが消え、さらに134人については5年後の生存が確認されました(2。

このように、ある物質や細胞、薬を投与して患者の免疫力を活性化し、がんへの攻撃力を高めようとする治療は、現在の免疫賦活(ふかつ)療法にあたります。

■試行錯誤を経て、標的を絞った治療へ
免疫賦活療法を皮切りに、1970年代以降は、がん細胞と免疫のさまざまなかかわり合いが研究されました。数々の発見が報告されるごとに、新たなアプローチが模索され、試行錯誤がくり返されてきました。

たとえば、1980年代には、アメリカの国立予防衛生研究所(NIH)に所属するスティーブン・ローゼンバーグ氏が、活性化自己リンパ球療法と呼ばれるLAK(Lymphokine-Activated Killer cell)療法を開発しました。これは、患者の血液から大量のリンパ球を取り出し、免疫を活性化させる物質であるサイトカインの一種「インターロイキン2」を加え、数も増やしたうえで、患者の体に戻すという方法です(図1)。

図1 リンパ球を取り出して活性化させ、体内に戻すLAK療法

図1 リンパ球を取り出して活性化させ、体内に戻すLAK療法

ところが、その時点ではまだ明らかになっていないそれぞれの免疫細胞の特徴などがあったため、それらすべてを効率よく活性化することができず、体内に戻されても、期待したようながん細胞への攻撃力は発揮されませんでした。しかし、活性化する免疫細胞を、たとえばT細胞だけに絞り込む(標的を特定する=特異的がん免疫療法)といったその後の治療戦略に大きく貢献しました。

その後の研究により、がん細胞の目印となるがん抗原が発見され、免疫細胞である樹状細胞の存在やその役割(がん細胞の目印を、がん細胞を攻撃するT細胞に伝達)、T細胞などが活性化する仕組み、がん細胞が免疫を抑制する仕組みなども解明されていきました。現在では、免疫の監視を避け、裏をかこうとするがん細胞のたくらみやふるまいの仕組みがかなりわかってきており、その研究成果を応用した治療法が行われています(図2)。

図2 がん免疫療法の種類とあゆみ

図2 がん免疫療法の種類とあゆみ

1)Couzin-Frankel J. Science. 2013; 342(6165): 1432-1433.
2)Nauts HC, et al. Cancer Res. 1946; 6(4): 205-216.

《参考資料》
河上裕(編), がん免疫療法 腫瘍免疫学の最新知見から治療法のアップデートまで. 実験医学増刊 Vol.34 No.12, 羊土社 2016
岡三喜男(著), 読んで見てわかる免疫腫瘍学. 中外医学社 2017
日本免疫学会(編), からだをまもる免疫のふしぎ. 羊土社 2008
日本免疫治療学研究会, 免疫治療レギュラトリーサイエンス委員会(編), がん免疫細胞療法臨床試験ガイダンス 2014

監修医師紹介

阿部 吉伸 医師

湘南メディカルクリニック新宿院

院長阿部 吉伸医師

詳しくはこちら

【備考】
日本外科学会永久認定医
日本胸部外科学会永久認定医
心臓血管外科専門医(2004~2009)
下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術実施医
日本癌治療学会会員
日本心臓血管外科学会国際会員
日本胸部外科学会正会員
日本脈管学会会員
日本静脈学会会員
日本血管外科学会会員
日本再生医療学会会員
医学博士

経歴
1990年 国立富山医科薬科大学医学部卒
富山医科薬科大学病院第一外科入局(胸部・心臓血管外科・一般消化器外科)
1994年 国立富山医科薬科大学大学院卒・医学博士
胸部外科認定医取得(食道・肺・心臓外科)
1992年
~1994年
パリ第12大学アンリーモンドール病院心臓外科留学
1997年 国立金沢病院心臓血管外科勤務
2004年 パキスタン、トルコ、ミャンマーの日本大使館に外務省参事官兼医務官として8年間海外勤務。
2012年 新宿血管外科クリニック 院長
2015年 湘南メディカルクリニック新宿院 院長
株式会社シーオーメディカル顧問医就任

当院で受けることが出来る免疫チェックポイント阻害剤

  • ニボルマブ(抗PD-1抗体)

    ニボルマブ(抗PD-1抗体)とは?

    がん免疫療法(NK・T細胞投与)と併用し免疫機能を高めるニボルマブ(抗PD-1抗体)の点滴治療

    詳細はこちら

  • イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)

    イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)とは?

    CTLによるがん(細胞)の破壊する働きを助ける免疫チェックポイント阻害剤

    詳細はこちら

  • 2種類の免疫チェックポイント阻害剤の併用療法

    免疫チェックポイント阻害剤併用療法とは?

    ニボルマブ(抗PD-1抗体)+イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)併用がん免疫療法(NK・T細胞投与)でがんの治癒率が飛躍的に伸びる可能性があります。

    詳細はこちら

  • アクセル+ブレーキ療法®コラム

    免疫療法のアクセル+ブレーキ療法®とは?

    従来の各種免疫細胞の活性化(アクセル)と、がん細胞の反撃を抑える免疫チェックポイント阻害剤(ブレーキ)を併用した新しい治療

    詳細はこちら

湘南メディカルクリニックによる
あきらめないがん治療

まずは、お気軽にご相談下さい。

新宿
0120-798-300
両国
0120-279-219

通話無料 診療時間 AM10:00~PM7:00

よくあるご質問

  • 治療期間はどのくらいですか?
  • 副作用はありますか?
  • 費用はいくらかかりますか?

カテゴリー別【がん治療情報コラム一覧】

がん免疫療法(治療)の 湘南メディカルクリニック