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がん治療情報コラム

<難治性乳がんの核酸医薬治験が開始!>

 

国立がん研究センターは、当センター研究所が発見した、乳がんの治療抵抗性に関わるRibophorin II (RPN2)遺伝子の発現を抑制する核酸医薬製剤TDM-812を、株式会社スリー・ディー・マトリックスと共同開発し、世界で初めて人へ投与する第Ⅰ相医師主導治験を中央病院で開始し、このほど被験者へ投与しました。

核酸医薬は、異常な遺伝子の働きに対し、それを抑制するように作用するため副作用も少なく、病気の原因を根本的に治療することが期待できる新しい医薬品です。これまで、安定化と薬物送達が課題とされ、がんの治療薬として承認されているものはありませんでした。今回開発された核酸医薬製剤ではその課題を解決し、大型動物を用いた非臨床試験で有効性を確認しました。本医師主導治験により、世界初の核酸医薬による乳がん治療薬の承認を目指しています。 

治療抵抗性の局所進行・再発乳がんでは、乳房の原発巣および周囲のリンパ節などにおいて病巣が皮膚に進展すると巨大な腫瘤(かたまり)を形成したり、皮膚潰瘍(皮膚の一部欠損)が生じることがあります。それにより局所の疼痛・出血・悪臭・浸出液などを生じ、患者様の生活の質(QOL)が損なわれることが少なくありません。既存治療で対応が困難な局所病変を制御することで、患者様のQOLを改善できる新規治療の開発が求められています。 

今回の治験薬は、国立がん研究センターで発見されたものが、国内企業との連携で製剤化されたもので、局所進行再発乳がんを対象とした医師主導治験として世界で初めて開始されました。 

本医師主導治験で治療標的とするRPN2遺伝子は、研究所が2008年に乳がんの治療抵抗性にかかわる分子として発見し、Nature Medicine誌に発表しました。乳がん細胞などでRPN2遺伝子が強く働くと、乳がん細胞は抗がん剤を細胞外に排出することにより抗がん剤耐性を獲得します。また、がん細胞を生み出す元となる細胞で、治療抵抗性に関わるとされるがん幹細胞の制御に関わっていることも分かっています。実際に乳がんの臨床検体の解析においても、RPN2遺伝子の発現と予後との相関も明らかになっています。さらに、応用研究の過程で、RNA干渉という技術を用いて、RPN2遺伝子の発現を減らす働きをするsiRNA(RPN2siRNA)をがん細胞に導入することで、乳がん細胞の抗がん剤耐性の性質や増殖が抑えられることがわかってきました。

核酸医薬とは、異常な遺伝子の働きに対し、それを抑制するように作用する新しい医薬品です。がん細胞の活動を司る遺伝子や、がんの原因となるタンパク質の生成に関わる遺伝子に対し特異的に直接作用するため、がんの原因を根本から治療することが期待されています。様々な遺伝子に対する核酸医薬が注目されていますが、がんに対する治療薬として承認されているものは現在ありません。

siRNAをはじめとした核酸医薬は、そのままの状態では細胞内に取り込まれず、生体内で容易に分解され、作用が発揮されないという問題があります。siRNAを分解から守り、がん細胞内に効率よく導入するために、薬剤をがん組織に到達させる何らかの方策が必要です。国がんは国内企業と連携し、界面活性剤ペプチドであるA6KをキャリアとしたRPN2siRNA製剤(TDM-812)を開発しました。RPN2siRNAとA6K が複合体を形成することにより、生体内で分解されにくくなり、細胞内への取り込みが促進されます。核酸医薬の課題とされていた薬物送達は、A6Kとの複合体を形成することで安定化を図り、大型動物を用いた非臨床試験においてその有効性を確認しました。一方、RPN2遺伝子は正常組織ではほとんど発現しないことから、RPN2遺伝子を標的とした核酸医薬は、正常細胞に損傷を与えることなく、がん細胞に選択性の高い治療となることが期待されています。

乳がんは、日本人女性のがんの中でも最も多いがんであり、今後さらに急増するものと推測されています。転移や再発を起こした乳がんに対しては、病気の進行を抑えることを目的として内分泌(ホルモン)療法や、抗がん剤などの薬物療法が用いられています。乳がんの局所腫瘤は、疼痛・出血・悪臭・浸出液などを伴い、患者様のQOLを著しく低下させます。また、乳がんの局所腫瘤は治療抵抗性であることが多く、新規治療の開発が求められています。 

本医師主導治験は、治療抵抗性の乳がんで体表から触知できる局所腫瘤を有する患者様を対象とし、新規核酸製剤であるTDM-812(RPN2siRNAとA6K の複合体)を皮下の腫瘤に局所投与した際の安全性および忍容性の評価を行い、局所投与法における推奨用量を決定することを目的とした第Ⅰ相試験です。今回、TDM-812は、世界で初めて人へ投与されることとなり、本試験はファースト・イン・ヒューマン試験の医師主導治験として国立がん研究センター中央病院、乳腺・腫瘍内科で実施されています。 

国内の研究所で開発されたものを、国内企業の技術により核酸医薬として製剤化し、乳がんの臨床試験として行うことは国内初です。平成27年6月30日に、本医師主導治験の1人目として、鎖骨下リンパ節転移(局所腫瘤)を有するトリプルネガティブ乳がんの患者様が投与を開始しました。 今後に期待が持てる核酸医薬です。



【用語解説

・RNA干渉
細胞内の標的とする遺伝子に対し、その塩基配列と同じ二本鎖RNAを導入することで、特定の遺伝子の発現が抑制される現象のこと。標的遺伝子から合成されたmRNAに二本鎖RNAが作用して、mRNAが特異的に分解されることにより、遺伝子の発現が抑制されます。

・siRNA
21-23塩基対からなる低分子二本鎖RNAで、人工的に合成できる。細胞内に導入することでRNA干渉を引き起こすことができますが、単独では導入効率が低く、体内で容易に分解されるため、何らかの適切な製剤化が必要となります。

・界面活性剤ペプチド
6-10残基程度のアミノ酸から構成されるペプチドで、 疎水性部分と電荷をもつ部分が存在することにより、界面活性剤としての性質を示します。水溶液中で自己組織化されることでナノチューブを形成し、siRNAをはじめとする各種の分子と複合体を形成します。

・第Ⅰ相試験(フェーズ1)
新しい薬をはじめて人(患者様)に投与する段階の試験。少数の患者様で、投与量を段階的に増やしていき、薬の安全性と適切な投与量、投与方法を調べます。通常、標準的治療法のないがん患者様が対象となります。

・ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験
新しい薬を全世界ではじめて人(患者様)に投与する段階の試験。人における投与経験がないため、第I相試験のなかでも特に緻密さや経験が要求されます。これまで日本ではFIH試験を実施できる体制が整っていなかったため、海外でFIH試験とその後の開発が進んでから日本での開発が行われることが多く、ドラッグラグを生む一因となっていました。

・トリプルネガティブ乳がん
乳がんのタイプのひとつで乳がん全体の約10~15%を占めます。女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)により増殖する性質をもたず、かつ、がん細胞の増殖に関わるHER2タンパクあるいはHER2遺伝子を過剰にもっていないという特徴をもちます。3つの陰性(エストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性、HER2陰性)を意味してトリプルネガティブといわれます。ホルモン療法や、HER2を標的とした分子標的薬は使わず、抗がん剤治療を行います。

 

 

当院で受けることが出来る免疫チェックポイント阻害剤

  • ニボルマブ
    (抗PD-1抗体)
    オプジーボ・
    ニボルマブ
    (抗PD-1抗体)

    ニボルマブ
    (抗PD-1抗体)
    オプジーボ・
    ニボルマブ
    (抗PD-1抗体)
    とは?

    がん免疫療法(NK細胞投与)NK・T細胞療法と併用し免疫機能を高めるニボルマブ
    (抗PD-1抗体)
    オプジーボ・
    ニボルマブ
    (抗PD-1抗体)
    の点滴治療

  • イピリムマブ
    (抗CTLA-4抗体)
    ヤーボイ・
    イピリムマブ
    (抗CTLA-4抗体)

    イピリムマブ
    (抗CTLA-4抗体)
    ヤーボイ・
    イピリムマブ
    (抗CTLA-4抗体)
    とは?

    CTLによるがん(細胞)の破壊する働きを助ける免疫チェックポイント阻害剤

  • 2種類の免疫チェックポイント阻害剤の併用療法

    免疫チェックポイント阻害剤併用療法とは?
    ニボルマブ
    (抗PD-1抗体)
    オプジーボ・
    ニボルマブ
    (抗PD-1抗体)
    イピリムマブ
    (抗CTLA-4抗体)
    ヤーボイ・
    イピリムマブ
    (抗CTLA-4抗体)
    併用がん免疫療法(NK細胞投与)NK・T細胞療法でがんの治癒率が飛躍的に伸びる可能性があります。

  • アクセル+ブレーキ療法®コラム

    免疫療法のアクセル+ブレーキ療法®とは?
    従来の各種免疫細胞の活性化(アクセル)と、がん細胞の反撃を抑える免疫チェックポイント阻害剤(ブレーキ)を併用した新しい治療




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