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脳腫瘍の遺伝子分類は、従来の組織分類よりも予後がわかる!?

脳腫瘍の遺伝子分類は、従来の組織分類よりも予後がわかる!?

 

【2015年7月06日】

脳腫瘍の組織分類だけでは、なかなか予後がわかりにくいのが現状です。例えば、世界保健機関(WHO)分類でグレードII~IIIの悪性度が低い神経膠腫(グリオーマ)は、組織学的分類からは予想がつかない、極めて多様な予後を示します。あるものは、進行が速い神経膠芽腫にすぐに変化し、別のものは悪性度の低い神経膠腫のままずっと存在したりします。
このばらついた予後予測を何とか確実なものにしようと、遺伝子異常に基づいた分子病理学的な分類(遺伝子分類)を目指し、2003年にスタートしたThe Cancer Genome Atlas(TCGA)計画では、この悪性度が低い神経膠腫の体系的な遺伝子解析が進められています。TCGA研究ネットワークは、悪性度が低い神経膠腫患者293人から得た遺伝子関連情報に基づき、遺伝子分類と臨床転帰との関連を検討しました。そして、遺伝子分類の方が、組織学的分類に比べ、転帰をより正確に反映することを示し、NEJM誌電子版へ2015年6月10日に報告しました。

神経膠腫は、脳の神経の周りにある神経膠細胞から発生する腫瘍です。悪性度の低い神経膠腫の患者の一部は、速やかに進行して数カ月以内に神経膠芽腫(WHOグレードIVの、最も悪性度が高い神経膠腫)へと進行します。一方で、数年間安定した状態を維持する患者様も少なくありません。神経膠腫のより細かい分類の星細胞腫や、乏突起膠腫といった神経膠腫の組織学的な分類でも、転帰の予測が難しいことが多くありました。この転帰に多様性がある原因の一つは、組織学的診断が観察者間でばらつくことにあるとも考えられています。

既に、イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードするIDH、TP53、ATRXといった遺伝子の変異や、1番染色体単腕と19番染色体長腕の共欠失(1p/19q共欠失)は、悪性度の低い神経膠腫のマーカーとして、臨床的に意義があることが示唆されており、これらに基づく分子分類を予後判定に利用したいと考える医師が現在、増えてきています。

TCGA研究ネットワークは、悪性度の低い神経膠腫について、生物学的特性を反映するより良い分類法を同定するために、患者の標本からゲノム関連情報を得、転帰との関係について検討しました。

低悪性度神経膠腫で治療歴の無い成人患者293人(星状細胞腫100人、乏突起星細胞腫77人、乏突起膠腫116人)を対象に、エキソーム配列、DNAコピー数、DNAメチル化、メッセンジャーRNA配列、マイクロRNA配列、TERTのプロモータ領域の配列などを分析し、逆走蛋白質アレイ(RPPA)を用いた蛋白質発現解析や、一部の標本については全ゲノムシーケンスを行いました。そして、それらのデータを統合し、臨床転帰との関係を調べました。

その結果、遺伝子関連情報に対して、外的基準なしに自動的に分類する「教師なしクラスタ分類法」を適用したところ、組織学的分類よりも正確にIDH、1p/19q 、TP53の状態を反映する、重複のない、臨床的に意義のある3群に分類できることが判明しました。対象者のうち85人がグループ1:「IDH変異陽性で1p/19q共欠損あり」、141人がグループ2:「IDH変異陽性で1p/19q共欠損なし」、56人がグループ3:「IDH野生型」に分類されました。

3群のうち、グループ1:IDH変異と1p/19q共欠損を有する患者の臨床転帰が最も良好でした。そうした患者のCIC、FUBP1、NOTCH1遺伝子には不活性化変異が認められ、PIK3CA、PTBP2、TERT、IDH1、IDH2遺伝子には活性化変異が見られました。

次に、グループ2のIDH変異陽性ですが1p/19q共欠損をもたない患者においては、全体の94%にTP53不活性化変異が、86%にATRX不活性化変異が認められました。また、このグループ2の患者ではMYC、CCND2、IDH1、IDH2遺伝子に活性化変異が見られました。グループ2に分類される患者の多くは低悪性度の状態を維持し、神経膠芽腫の発症は稀で、グループ1同様、予後は良好でした。

最後のグループ3:IDH野生型の患者には、PTEN、NF1、CDKN2A遺伝子に不活性化変異が、EGFR、MDM4、TERT遺伝子に活性化変異が見られました。このグループ3の患者は、悪性度の最も高い原発性神経膠芽腫患者と非常によく似たゲノムの異常と臨床的挙動を示し、悪性度が高く予後も不良な神経膠芽腫への進行の頻度は高くみられました。

TCGA研究ネットワークによると、こうした遺伝的な異常に由来する信号伝達経路の変化を修正する治療の開発が既に行われているということで、「いずれは、個々の患者のゲノム関連情報に基づく、最適な治療が可能になると期待される」としています。今後は、がんも遺伝子タイプ別に分類され、この遺伝子のタイプ別に、オーダーメイドの遺伝子治療が行われるようになるかもしれませんね。


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監修医師紹介

阿部 吉伸 医師
湘南メディカルクリニック新宿院
院長 阿部 吉伸 医師

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【備考】
日本外科学会永久認定医  日本胸部外科学会永久認定医
心臓血管外科専門医(2004~2009)
下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術実施医  日本癌治療学会会員
日本心臓血管外科学会国際会員
日本胸部外科学会正会員  日本脈管学会会員  日本静脈学会会員
日本血管外科学会会員  日本再生医療学会会員  医学博士
経歴
1990年 国立富山医科薬科大学医学部卒
富山医科薬科大学病院第一外科入局(胸部・心臓血管外科・一般消化器外科)
1994年 国立富山医科薬科大学大学院卒・医学博士
胸部外科認定医取得(食道・肺・心臓外科)
1992年~1994年 パリ第12大学アンリーモンドール病院心臓外科留学
1997年 国立金沢病院心臓血管外科勤務
2004年 パキスタン、トルコ、ミャンマーの日本大使館に外務省参事官兼医務官として8年間海外勤務。
2012年 新宿血管外科クリニック 院長
2015年 湘南メディカルクリニック新宿院 院長
株式会社シーオーメディカル顧問医就任

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